ギリシア美術

2016年7月15日 (金)

「古代ギリシア、時空を超える旅」東京国立博物館・・・永遠を旅する哲学者

Greece_20160621Greece_201606夕暮れ散歩、夕暮れの森を歩いて、博物館に行く。ギリシアを旅した輝ける日々を思い出す。アテネ、デルフォイ、テッサロニキ、メテオラ、ロドス島、クレタ島、エーゲ海クルーズ。黄昏の丘のアテナ神殿。黄昏の神殿に、木の香りが漂う。黄昏の丘を歩いた日々。
ギリシア全土をめぐって、美術館でみた美しい軌跡。アクロポリスのコレー、デルポイの御者、アルテミシオンのゼウス、うずくまるヴィーナス、クレタ島のファイストスの円盤、ミノス王の迷宮、ロドス島のリンドス、クレタ島の蛇をもつ女。クノッソス宮殿。黄昏の丘を歩いた日々。美しい記憶。失ったものは永遠に美しい。星の輝く夜、美しい天使が舞い降りる。
旅立とう。エーゲ海へ。美しい人とともに。
*大久保正雄『旅する哲学者 美への旅』より
*大久保正雄『永遠を旅する哲学者 美のイデアへの旅』より
―――
哲学者は永遠を旅する。フォンテーヌブローの森の貴族の館で幻の『レダ』をみる。
レオナルドの微笑みをみると、ボロマンドラのクーロス、アクロポリスのコレーを思い出す。ペプロフォロス、ヒュマティオンを纏うイオニアの少女。
レオナルドのレダの微笑みは、ギリシアのアルカイック・スマイルと同じ根源である。
内なる心において美しい人になることを希求するソクラテスの祈りのように、根源の美への旅である。
永遠を旅する哲学者は、永劫の翼に乗って、古代へ旅する。
―――
世界の果てに辿りつき、美の泉を手に入れても、立ち上って、さらに、歩いて行かなければならない。美のイデアに向かって。
永遠を旅する哲学者 魂の果てへの旅
*大久保正雄『永遠を旅する哲学者 美のイデアへの旅』
わたしは自分自身を探求した。(Fr.‏101)魂の限界は、それに行き着こうとして、たとえあらゆる道を踏破しても、見つけ出せない。それほど深いロゴス(理)を、魂は持っている。(Fr.45)高慢の焔は、燃える火よりも鎮めなければならない。(Fr.43)
われに聞くにあらず、ロゴスに聞いて、万物が一であることを認める。(Fr.50)
*Diels-Kranz,Die Fragment der Vorsokratiker
『ソクラテス以前の哲学者の断片』ヘラクレイトス ‏より
「永劫の時の広く張った翼以外、ヘラクレイトスは己が立つべき場所を全く知らない。現在や瞬間に属するものには敬意を払わぬということ、これこそ偉大な哲学的天秤の本質である。」*Nietzsche, Friedrich, Die Philosophie im tragischen Zeitalter der Griechen
ニーチェ『ギリシア人の悲劇時代における哲学』
*大久保正雄『地中海紀行 旅する哲学者 美への旅』より
アルカイックのクーロスとレオナルド派「レダ」
大久保正雄「旅する詩人、エウリピデス ギリシア悲劇の極致」
https://t.co/BIXeFsq7GS
―――
アクロポリスの丘の北側に立つエレクテイオン神殿、美しい柱がある。屋根を支える女人柱、6体のコレー(乙女)像。 カリアティデスと呼ばれる。
エレクテイオン神殿は、イオニア式柱頭を戴き、優美な佇まいである。エレクテイオン神殿には南面柱廊に、6体の女人柱(カリアティデス)が屋根を支える、乙女のテラスがある。柱廊のカリアティデス、柱となった6人の女人が限りなく優美である。エレクテイオンの一角に聖なるオリーヴの木の跡がある。大理石の白亞の列柱に、眞昼の日差しが烈しく降り注ぎ、光と影が烈しい対比を織り成し、眞昼の丘は、溜め息が出るほど美しい。
エレクテイオン神殿、カリアティデス(女人柱)
大久保正雄「アクロポリスの光と影 パルテノン神殿」
https://t.co/nmDmRi4sGN
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★主要な展示作品
キュクラデス型女性像BC 2800~BC 2300年
スペドス型女性像BC 2800~BC 2300年
海洋様式の葡萄酒甕BC1450年
牛頭型リュトン BC1450年
ユリと花瓶のフレスコ画BC17C サントリーニ島ティラ
アッティカ幾何学様式アンフォラ
コレー BC530アテネ、アクロポリス、エレクテイオン出土
ボイオティアのクーロスBC520 アポロン神域
テミストクレスの名前のオストラコン(陶片) BC482年の陶片追放
アルキビアデスの名前のオストラコン(陶片) BC60年の陶片追放
アッティカ黒像式ピュクシス BC510
ギンバイカの金冠 デルヴェニ墓地出土 BC4C
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★「古代ギリシャ―時空を超えた旅―」東京国立博物館
2016年6月21日 ~ 9月19日
https://t.co/00mJ5avxKQ

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2012年12月 9日 (日)

メトロポリタン美術館展・・・ギリシア幾何学様式時代の馬

Greek_bc8c 黄葉の枯葉の絨毯を歩いて、美術館に行く。少年の時、『ギリシア美術史』で夢みた「幾何学様式時代の馬」に魅せられる。ギリシアには、純粋な精神の美がある。人類の青春時代である。
メトロポリタン美術館にある傑作は、ダヴィッド『ソクラテスの死』、エル・グレコ『トレド風景』、ラトゥール『女占い師』、フェルメール『水差しを持つ若い女』、等である。ゴッホ『星月夜』(Starry Night 1889)は、ニューヨーク近代美術館MoMAにある。
■「幾何学様式時代の馬」Geometric Art in Ancient Greece
幾何学様式時代のギリシアの馬には、ギリシア人の精神の純粋な美しさの形がある。
紀元前8世紀は、ギリシアの目覚めの時代である。暗黒時代を超えて、高貴な精神を築いた。
紀元前8世紀、ギリシア各地にポリスが成立。紀元前750年、ホメロス『イリアス』『オデュッセイア』が書かれ、紀元前725年、スパルタはメッセニア戦争を起した。紀元前682年、アテネに任期一年のアルコン職が導入され、貴族制が成立した。暗黒時代から4世紀の後、都市国家を作った。
ギリシア人の知性の輝きは、人類史上、最も優れている。一刀両断する分析力、体系的思考、深遠な直観と思想の美を建築した。ギリシア人は、知性の存在を学問体系として構築した。大久保正雄
*BC.1200年ギリシア人の別の一派(ドーリア人)が南下してギリシア本土へ侵入した。先に定着していたギリシア人の諸部族を支配、追放してギリシア全体が大混乱する時代が訪れた。ミケーネ文明は崩壊、文字も失われた。BC.12~8世紀、ギリシア史の暗黒時代。その暗闇からポリスが生まれた。
■幸福が地上に住むとすれば、それは必ずや我々から可能な限り遠い所、たとえば地の果ての彼処だ、とギリシア人たちは考えた。ニーチェ『漂泊者とその影』
★参考文献
村田数之亮『ギリシア美術』新潮社1974
伊藤貞夫、秀村欣二『ギリシアとヘレニズム』講談社1976
*Statuette of a horse, 8th century b.c.; GeometricGreek
Bronze H. 6 15/16 in. (17.63 cm×13.3 cm)Rogers Fund, 1921 (21.88.24)
http://www.metmuseum.org/toah/works-of-art/21.88.24
■展示構成
第一章:理想化された自然
クロード・ロラン「日の出」1646-7
第二章:自然の中の人々
ジャン=フランソワ・ミレー「麦穂の山:秋」1868年から1875年、農村の四季を描いた連作の1枚。
ポール・ゴーガン「水浴するタヒチの女たち」1892
第三章:動物たち
「リラのための牛頭の装飾」メソポタミアBC 2600
「猫」エジプトBC322
第四章:草花と庭
第五章:カメラがとらえた自然
第六章:大地と空
エドワード・ホッパー「トゥーライツの灯台」1929
フィンセント・ファン・ゴッホ「糸杉」1889年
第七章:水の世界
ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー「ヴェネツィア、サンタ・マリア・デッラ・サルーテ教会の柱廊から望む」
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■メトロポリタン美術館展 大地、海、空—4000年の美への旅
世界最大規模を誇る「美の殿堂」、メトロポリタン美術館から、4000年にわたる人類の美の遺産 約130点が集結。
世界最大規模を誇る「美の殿堂」、ニューヨーク・メトロポリタン美術館が所蔵する名品によって、古代から20世紀まで約4000年にわたる西洋美術のエッセンスを紹介する展覧会。
同館の作品群は古今東西の計200万点以上にのぼり、その多様性と質の高さから「見る美術百科事典」とも評されています。今回はその中から、古代メソポタミアやエジプトの工芸品、中世のタペストリー、レンブラントやモネ、ルノワール、セザンヌ、ゴッホ、ゴーガンらの巨匠による絵画、現代の写真など、西洋美術において、風景や動植物がどのように捉えられてきたかをテーマとして約130点を展示。メトロポリタン美術館の代表作が勢揃いします。ゴッホの「糸杉」は待望の日本初公開です。今春大規模改修工事を終えリニューアルオープンを迎えた東京都美術館で、世界最高峰の珠玉のコレクションをじっくりとお楽しみください。
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■【特別展】メトロポリタン美術館展 大地、海、空—4000年の美への旅 Earth, Sea and Sky: Nature in Western Art; Masterpieces from The Metropolitan Museum of Art
東京都美術館
2012年10月6日~ 2013年1月4日
http://met2012.jp/
★フィンセント・ファン・ゴッホ 《糸杉》 1889年
Gogh: Cyples 1889 The Metropolitan Museum of Art
20121006 

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2012年7月 2日 (月)

大久保正雄『ギリシア神話 愛と美の女神たち』

Amor_et_psyche_francoise_pascal_sim あるピアニストから『ギリシア神話』の講義をしてほしいという依頼があり講義します。
輝ける紺碧の海、エーゲ海でくり広げられる、神々の世界。
複雑多彩を極めるギリシア神話の迷宮。ギリシア神話は、綺羅星のように輝くラブロマンスの宝庫である。美をめぐる女神の争い。愛と美の女神アプロディーテ。知恵の女神アテナ。ヘラの嫉妬。
アポロンの悲恋。エロスの黄金の矢。ディオニュソスの苦難。絶世の美女レダ、傾国の美女ヘレネー。トロイアの最も美しい王女カッサンドラの悲劇。
愛の歓び。愛と憎しみ。怒りと恨みと復讐。運命と逆襲。苦難を超える知恵の輝き。生と死の秘密。あらゆる思考と感情が込められている。
「エロスと魂の愛」は、至高の愛である。魂の愛は不滅である。真の愛は、無償の愛である。
ホメロスからオヴィディウス、アプレイウスまで、千年に亙って書きつづけられた物語の迷宮。藝術の道は悠久の時を超える終わりなき旅路。学問も永遠の旅である。
二千年の時の流れを超える不朽の叡智がギリシアにある。黄昏の梟とともに、哲学は飛び立つ。ギリシア神話の愛と美の女神たち、その魅力と知恵の意味を探求する。大久保正雄
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■講座『ギリシア神話とルネサンス美術 愛と美の女神たち』大久保正雄(講師)
ドラード・ギャラリーにて
8月29日(水)、午後6時から8時。ワインパーティ8時から。
定員10名。受講料3000円。パーティ1000円。参加ご希望の方、ご予約下さい。
★162-0041東京都早稲田鶴巻町517ドラード早稲田103
ドラードギャラリー TEL03-6809-3808 MAIL dorado@oldtimes.jp
http://dreamgallery.oldtimes.jp/
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★参考資料
レオナルド派『レダ』
http://mediterranean.cocolog-nifty.com/blog/2012/05/post-4497.html
大久保正雄『地中海紀行』ギリシア 愛と復讐の大地
http://homepage3.nifty.com/odyssey/27c8c001.html
http://homepage3.nifty.com/odyssey/27c8c002.html
★「日本のガウディ」と呼ばれた梵寿綱のマンション「ドラード早稲田」
http://suumo.jp/journal/2012/06/25/22494/
建築家、梵寿綱http://www.vonjourcaux.com/
★フランソワ・ジェラール「エロスとプシューケー」1798
François Gérard, Francois Gerard, L'Amour et Psyché, 1798 Louvre

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2011年9月13日 (火)

ギリシア美術・・・美と復讐

Athens_temple_of_olympian_zeus2011 夏の午後、せみ時雨の中、「古代ギリシャ展」国立西洋美術館に行く。紺碧のエーゲ海、輝くギリシア彫刻の美、夏のギリシアの海の色を思い出す。
失われたプラクシテレス「クニドスのアプロディーテ」(BC360)、至高の美神の幻影がローマ時代の複製彫刻から蘇る。
ギリシア文化の極致に、美と復讐の美学がある。ギリシアの哲学者は精神の美を探究した。ギリシア悲劇は正義の実現と復讐の成就のドラマを構築した。アイスキュロス「オレステイア3部作」、エウリピデス『オレステス』、ソポクレス『エレクトラ』には、「復讐の達成による正義の実現」が、人類の歴史に永遠に刻まれている。ギリシア文明が腐敗し爛熟した時代、権力と大衆の無知、虚偽と悪が顕現した。
ギリシアの美術館、イタリアの美術館でみた、ギリシアの神々が美しく蘇る。アルテミシオンのポセイドン、ヴェルベデーレのアポロン、ラオコーンは輝くように美しい。
■神々の復讐
ギリシアの神々は、苦難と復活の物語に彩られている。
ディオニュソスは、ゼウスとセメレの子である。幼子ディオニュソスは、嫉妬する女神ヘラの迫害を受けて彷徨い、葡萄の樹を発見し、女神レアによって狂気から癒され秘儀を伝授される。秘儀と葡萄を世界中を遍歴する。そして故国テーバイで母セメレの復讐を信女たちによって遂げる。(注1)
アポロンは、ゼウスとレトの子である。レトは、女神ヘラの嫉妬を受け迫害され地を追われる。レトはデロス島でアポロンを出産する。「竪琴と弓が私の持ちもの。ゼウスの誤りない意を人間たちに伝えよう」(注2)音楽の神、弓矢の神、予言の神である。アポロンはデルポイで大蛇(ピュトン)を射殺しその信託所にすまう。
エロスは、アプロディーテの子で愛の矢を放つ。(注3)アポロンはエロスが弓を張っているのを見てエロスに「私なら野獣にも敵にも狙い違えず傷を負わせることができる」という。(注4)エロスは「私の弓はあなたをも射ることができる」といい返す。(注4)エロスは、金の矢と鉛の矢を持っていた。金の矢は「恋の思いを駆り立てる」。鉛の矢は「恋を嫌わせ逃れようとさせる」。エロスはアポロンを金の矢で射た。そしてエロスは美女ダプネを鉛の矢で射た。ダプネはアポロンから逃げつづけ父に「私の美しさを失くして下さい」と願うと、月桂樹に変身してしまった。(注4)エロスの矢は最強である。
英雄ヘラクレスは、母アルクメネがゼウスの子を産んだため女神ヘラの迫害を受け、二匹の蛇を揺り篭に送られたが、絞め殺した。ヘラの復讐により狂気につかれ、呪縛を解く方法をデルポイの信託に伺うと、エウリュステウスに使え12の難業を命じられる。12年にわたって怯懦名王に仕え、何行を果たした後、デイアネイラを妻とするが、デイアネイラは誤解からネッソスの血を塗りこめた毒の衣を着せ、非業の死を遂げる。最後は天界に迎えられ地上の苦悩から救われる。世界の非条理と不屈の意志の象徴である。
■「擬人化した葡萄の木とディオニュソス(バッカス)像」大理石AD150-200 Dionysos, British museum.
ディオニュソスと葡萄の木の精が見つめ合う。酒の神バッカスが、両性具有的な女性的な優美な曲線をもち、ぶどうの木の精と調和を奏でる。限りなく美しい。
■ディオニュソス
有名な彫刻は下記の作品がある。
プラクシテレス作「ヘルメスと幼子ディオニュソス」(Hermes and the Infant Dionysus by Praxiteles, (Archaeological Museum of Olympia)
葡萄酒と豹が属性である。
「ディオニュソス」(2nd century Roman statue of Dionysus, after a Hellenistic model (ex-coll. Cardinal Richelieu, Louvre)
■参考文献
村田数之介「ギリシア美術」新潮社1974
ジャン・シァルボノー岡谷公二訳『ギリシア・アルカイク美術』(人類の美術)新潮社1972
ジャン・シァルボノー村田数之介訳『ギリシア・クラシック美術 前480-330』(人類の美術)新潮社1973
フランソワ・ヴィラール, ロラン・マルタン岡谷公二『ギリシア・ヘレニスティク美術―前330-前50』(人類の美術)新潮社1975
カール・ケレーニイ高橋英夫訳『ギリシアの神話 神々の時代』中央公論社1974
『ギリシア悲劇全集』岩波書店1990
『世界古典文学全集8巻 アイスキュロス・ソポクレス』筑摩書房 1964
*注、略。
■「大英博物館 古代ギリシャ展-THE BODY究極の身体、完全なる美」国立西洋美術館2011年7月5日(火)~9月25日(日)
http://mediterranean.cocolog-nifty.com/blog/2011/07/post-098c.html
http://www.nmwa.go.jp/

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2011年7月20日 (水)

大英博物館 古代ギリシャ展・・・美しく善きもの

2011070506 夏の日の午後、森陰の道を歩いて、美術館に行く。葡萄の木の精と蔦を巻いたディオニュソス、恥じらいのアプロディーテ、水浴するアプロディーテ、翼もつエロス。ギリシア彫刻が、甘美な美しさを湛えている。輝かしい紺碧のエーゲ海、夏のギリシアを思い出す。
アテネ国立考古学博物館、アクロポリス博物館、デルフィ博物館、テッサロニキ博物館、ロドス博物館、ヴァチカン博物館、ベルリン博物館でみた、輝かしいギリシア彫刻を思い出す。
■美にして善(kalos kai agathos)
ギリシア人は、善美なるもの、美しいことと善なること、美と魂の卓越性の一致を追求した。肉体的な美のみを追求するのは、ギリシア人の思想ではない。ギリシア人は精神の美すなわち、魂の卓越性を探求した。卓越性(徳)とは、知恵、勇気、節制、正義である。
■「健全なる精神は健全なる肉体に宿る」という句がギリシア人の思想を表すといわれるがこれは救い難い誤謬である。この句は、ローマの詩人ユウェナリス『風刺詩集』第10編の誤用である。ナチス・ドイツと各国は宣伝文句として「健全なる精神は健全なる身体に」を掲げた。身体を鍛えることによって健全な精神が得られるかのような悪質な妄想へ恣意的に捏造、軍国主義を賞揚した。原文はorandum est ut sit mens sana in corpore sano.であり、「健やかな身体のなかに健やかな魂が願われるべきである」を意味する。ギリシア彫刻は理想美を追求したが、肉体美の極致のみを表現しているとするのは一面的で誤りである。ミュロン原作「ディスコ・ボロス(円盤投げ)」は、激しい動きのなかの静、瞬間の美を表現している。
■主な展示作品
「擬人化した葡萄の木とディオニュソス像(バッカス)」紀元後150-200年、原作紀元前2世紀。
「アプロディーテとエロス像」紀元前300-前110年頃
「ディスコ・ボロス(円盤投げ)」紀元後2世紀、大理石。ミュロン原作。原作:紀元前450-前440年頃)。ハドリアヌス帝別荘出土。
「ヘラクレス像頭部」紀元後117-118年、ペンテリコン産大理石。ハドリアヌス帝別荘出土。
黒像式ヒュドリア(水甕)「ディオニュソスの酒宴」紀元520年頃
「ヘスペリデスの園の黄金の林檎を手にするヘラクレス像」紀元後1世紀
「アプロディーテ像」パロス島産大理石、紀元後1世紀。プラクシテレス原作「クニドスのアプロディーテ」原作:紀元前4世紀。
「エロス像」紀元後2世紀、リュシッポス原作。
「黄金の耳飾り エロス」紀元前330-前320年頃
「ニケ」紀元前500年
「ソクラテス像」ヘレニズム時代、紀元前200-後100年
「ソポクレス像」
「クリュシッポス像」
■「大英博物館 古代ギリシャ展-THE BODY究極の身体、完全なる美」
人体表現は西洋美術の中心的なテーマのひとつです。西洋美術史において、このテーマにはじめて徹底的かつ真摯に取り組んだのは古代ギリシャ人でした。ギリシャ人は神も人間と同じ姿であるとみなしていました。その神や人間を「身体」という現実の形で表すことは、ギリシャ人が人間について考え、神について考えるときに欠かすことのできない手段だったのです。同時に、身体を絵画や彫刻によって形作りながら、ギリシャ人は来る日も来る日も美の原理を―美しい表現とは何であるのか、そしてどのようにして実現できるのかを―追い求めました。
本展では、大英博物館の貴重なコレクションを通して、ギリシャ人が作り上げた身体美の世界をさまざまな観点から紹介します。アスリートの鍛え抜かれた肉体や女神の官能的な裸体から、老いや醜さを表した赤裸々な姿まで、時空を越えて今もなお輝き続ける古代ギリシャの美を存分にお楽しみください。
国立西洋美術館http://www.nmwa.go.jp/
■「大英博物館 古代ギリシャ展-THE BODY究極の身体、完全なる美」国立西洋美術館2011年7月5日(火)~9月25日(日)

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