ガウディとサグラダ・ファミリア展・・・ガウディ「降誕の正面」、森を表現した内部空間、石のバイブル
大久保正雄『旅する哲学者 美への旅』第332回
青春の日々、春の夕暮れ、モンセラート修道院を訪れ、モンセラートの奇岩、モンセラートの糸杉、モンセラート美術館を見たのを思い出す。未完の聖堂サクラダ・ファミリアとは何か。奇岩の山、糸杉を思い出す。
【ガウディの創造の源泉】サクラダ・ファミリア、ガウディ「降誕の正面」は、モンセラートの奇岩、糸杉のイメージがあると思う。ガウディの創造の源泉は、生命の象徴、生命のフォルム、大地の浸食、建築のオリエンタリズム、建築家は幾何学者、森の聖堂、がある。と分析されている。
【早春のイベリア半島、バルセロナの思い出】
雪のチューリッヒ空港からイベリア半島の夜景を見下ろす夜間飛行でリスボンへ。リスボンからアンダルシア、アルハンブラ宮殿、トレドを旅して、マドリード空港から地中海を見下ろし、バルセロナへ飛行した。マドリード、ティッセン・ボルネミサ美術館「エル・グレコ展」を見たのを思い出す。
バルセロナ、ランブラス通り、ロエベ本店、ボケリア市場、海の見えるモンジュイックの丘、カタルーニャ広場、サクラダ・ファミリア、カサ・ミラ、カサ・バトリョ、グエル公園、カタルーニャ美術館、モンセラート修道院。
【グエル公園、不思議の国のアリス】1900年から1914年、アントニ・ガウディと出資者のグエル伯爵によって造られた庭園式の分譲住宅地。しかし当時、2人が目指した芸術性の高い斬新なデザインは市民に理解されず、買い手が付かない、その後、公園として市に寄付された。園内は洞窟の建築、神殿のような大階段、色鮮やかなタイルで飾られたトカゲ、蛇のオブジェが出迎え、その先にはグリム童話のお菓子の家がある。まるで夢の世界に迷い込んだ不思議の国のアリス。
【カサ・バトリョ(1904-6)、カサ・ミラ(1906-10)】モンセラート修道院から、夕暮れのバルセロナに帰ってきた。夕暮れの町を歩くと、カサ・バトリョ、カサ・ミラに人が集まっている。カサ・ミラの屋上に登り、屋根を歩くと、夜の闇が降りてきた。
*大久保正雄『旅する哲学者 美への旅』より
大久保正雄『永遠を旅する哲学者 イデアへの旅』
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【ガウディ、生涯と藝術】
【アントニ・ガウディ(1852-1926)、サグラダ・ファミリア】ガウディが二代目の建築家に就任した1883年から1926年に亡くなるまで40年以上、聖堂の設計と建設に心血を注ぐ。樹木のように枝分かれした柱によって「森」を表現した内部空間、身廊部、「降誕の正面」彫刻。建築造形、キリストの到来と幼・青少年時代を表現する「石のバイブル」として構想し、聖書の物語を表す浮彫と彫像で全面を装飾。
【ガウディの創造の源泉】ガウディの言葉「人間は創造しない。人間は発見し、その発見から出発する」「自然は私の師だ」
ガウディは、路面電車にはねられ73歳で死去。グエル公園、カサ・バトリョ、カサ・ミラ、サクラダ・ファミリア聖堂を残した。
ガウディの没後、スペインの内戦が勅発すると、聖堂の一部は破壊され、図面類は焼失、模型も粉砕されて建設は中断を余儀なくされたが、ガウディによる備蓄基金をもとに、修復工事と模型の復元が行われて工事は再開。
【サクラダ・ファミリア、ガウディ以後】
ガウディ計画を引き継ぐ、「降誕の正面」を飾る外尾悦郎と「受難の正面」を飾るJ.M.スビラクスの彫刻がある。
【ガウディ、世界遺産】1984年、ガウディの作品3件が「アントニ・ガウディの作品群」として、ユネスコの世界遺産に登録された。近代建築では初めてとなる快挙。2005年には、さらに4件が追加された。世界遺産に登録されたことで、ガウディの名声はより一層高まり、世界的な知名度を獲得した。
【ガウディ、断食】1894年の四旬節の時期、ガウディは体が弱り寝たきりになるほどの激しい断食を行う。もともと徹底した菜食主義者で粗食だが、仕事上の問題や過重労働による心身両面の疲労から、宗教心が高揚したためではないかと言われる。このときの断食は、バルセロナの新聞で報道された。
【ガウディ、幼少期】ガウディは1852年6月25日にスペイン中部のレウスという町で生まれました。幼い頃は肺感染症やリウマチ関節炎などに苦しめられ、病弱な幼少期を過ごした。「この子は大人になるまで生きられないかもしれない」と医者から言われるほどだったが、なんと彼は兄妹の誰よりも長い人生を送った。
【ガウディ、家業】ガウディの両親は、ともに銅板器具職を営む家系の出身、幼少時から家業の銅板細工に親しんでいた。装飾デザインのセンスや、建築家として空間をイメージする力が育まれていく。実際、彼は作業現場で自ら鉄を叩いて見事な鉄細工を作り上げたこともあった。
【ガウディ、学生時代】建築家になるために、ガウディは1868年にバルセロナに向かう。建築学校では「できの悪い学生だった」と回顧しているが、図書館で資料を読み漁り、有名建築家の下で実務に携わって実践的な技術を身につけていく。彼が建築家の資格を取得したのは、故郷を離れて10年後の1878年。
【ガウディ、パリ万国博覧会1878】ガウディは、バルセロナで有名な「クメーリャ革手袋店」がパリ万国博覧会(1878年)での展示用ショーケースのデザインを任される。メタルフレーム・総ガラス張りでデザインされたモダンなケースを気に入り、ガウディの才能を高く評価したのが、後に生涯のパトロンとなるアウゼビ・グエル。
【ガウディ、生涯のパトロン、グエル】フィンカ・グエルやグエル公園、ガウディは「グエル」と名のつく建築を数多く手掛けた、それらは彼の生涯のパトロンであったアウゼビ・グエルから依頼された仕事である。グエルの支援のもと、約40年にわたり、ガウディは自由で独創的なデザインセンスを存分に発揮した仕事ができた。
【ガウディ、恋】ガウディは生涯独身を貫いたが、仕事が軌道に乗っていた30代には、何人かの女性に恋する。お相手に婚約者がいたり、修道女になってしまったり、ガウディの恋はいずれも苦い結末を迎える。のちにガウディは「自分は結婚に向いていないタイプだった」と当時を振り返る。
【ガウディ、聖職者以上の知識を身につける】若い頃は迷いも多かったガウディだが、サグラダ・ファミリア聖堂の主任建築家に任命されたことが転機になる。キリスト教の専門書を愛読、優れた聖職者と交流を重ね、信仰心を深めていく。晩年のガウディは聖職者以上の知識を身につけ、典礼時などに神父を困らせる。
【ガウディ、交通事故】1926年6月7日、ガウディは仕事帰りに教会へ向かう途中で市電にはねられる。その粗末な身なりから、3台のタクシーに病院搬送を拒否された。3日 後、ガウディは病院で息を引き取る。葬儀では、ガウディを運ぶ馬車の後ろに多くの市民が行列をつくり、街路を埋め尽くした。
【サクラダ・ファミリア、6つの塔】2021年12月、聖堂の中央に位置する6つの塔のうち、頂点に星を頂くマリアの塔が完成、2022年12月、4つの福音書作家の塔のうち、ルカとマルコの塔が完成した。建設作業は現在も進み、残るマタイとヨハネの塔は2023年11月に、聖堂中央の最も高い塔となるイエスの塔は2026年までの完成を予定している。
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丹下 敏明「問題はガウディの手が実現したのが全体の10分の1。現在の全貌は果たして誰が作者なのかという事です。当然ですが、自分たちの仕事を正当化したいのは人情でしょうが、今のサグラダ・ファミリアがガウディのものと言えるか?厳しい所があると思います。」
梵 寿綱「内部の森林て的な構造はよく解析したと敬意を表しますが、ガウディ自身が生存中に完成し得ないと覚悟して残した「誕生の門」の元型にこそ、彼がキリストの生誕を象徴として込めた、もっと初源的な意味があることを読み取るべきでしょう。世俗にまみれたキリスト教由来の彫刻を多数取り付けたことで、ガウディの壮大な構想は卑近なものに引き下げられたように思えます。
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展示作品の一部
アントニ・ガウディ《サグラダ・ファミリア聖堂、降誕の正面:女性の顔の塑像断片》 1898-1900年、サグラダ・ファミリア聖堂 Fundació Junta Constructora del Temple Expiatori de la Sagrada Família
アントニ・ガウディ《植物スケッチ(サボテン、スイレン、ヤシの木)》 1878年頃、
レウス市博物館
アントニ・ガウディ《クメーリャ革手袋店ショーケース、パリ万国博覧会のためのスケッチ》 1878年、名刺の裏、レウス市博物館
《サグラダ・ファミリア聖堂、全体模型》 2012-23年、制作:サグラダ・ファミリア聖堂模型室、サグラダ・ファミリア聖堂 Fundació Junta Constructora del Temple Expiatori de la Sagrada Família
《サグラダ・ファミリア聖堂、身廊部模型》 2001-2002年、制作:サグラダ・ファミリア聖堂模型室、西武文理大学 photo:後藤真樹
アントニ・ガウディ《植物スケッチ(サボテン、スイレン、ヤシの木)》 1878年頃、
レウス市博物館
「降誕の正面」を飾る彫像も自ら手掛けるなど建築・彫刻・工芸を融合する総合芸術志向にも光を当て、100 点を超える図面、模型、写真、資料に最新の映像をまじえながらガウディ建築の豊かな世界を展示。
サグラダ・ファミリア聖堂受難の正面、鐘塔頂華 Fundació Junta Constructora del Temple Expiatori de la Sagrada Família
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参考文献
塔の中の王女たち 『アルハンブラ物語』
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大久保正雄『地中海紀行』第10回 P35
トレド、時が歩みを止めた町
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哀愁の大地スペイン 西方の真珠コルドバ
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大久保正雄「地中海紀行」第5回 P16
アンダルシアの光と影 コルドバ 列柱の森メスキータ
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「ガウディとサグラダ・ファミリア」図録、2023
ガウディとサグラダ・ファミリア展・・・ガウディ「降誕の正面」、森を表現した内部空間、石のバイブル
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東京国立近代美術館
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ガウディとサグラダ・ファミリア展
東京国立近代美術館、6月13日から9月10日
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