フランドル美術

2018年1月31日 (水)

「ブリューゲル展 画家一族 150年の系譜」・・・「婚礼の踊り」

20180123Pieter_bruegel_the_elder__hunters_i大久保 正雄『旅する哲学者 美への旅』第136回
雪の中、森を歩いて美術館に行く。ブリューゲル「雪中の狩人」の光景を思い出す。
私は、ハプスブルグ帝国の大地を旅した。早春のスペイン、灼熱のウィーン、プラハ、ブダペスト。美しい青春の日々。ウィーン美術史美術館で、ブリューゲル「雪中の狩人」(1565年)をみた。プラド美術館で、悪魔と怪奇の画家、ヒエロニムス・ボス「快楽の園」(1510)、をみて眩暈がした。ボス「愚者の石の切除」は権威の地位に立って民衆を欺く知識人の欺瞞の姿を露呈した。ヒエロニムス・ボスは、虚妄の権威を暴いた。フィリップ美公の蒐集を受け継ぐフェリペ2世。フェリペ2世は、至高の地位に立って、人間の本質に何をみたのか。
■ブリューゲル一族 150年の血族、9人の画家
ピーテル1世は、イタリアに旅し、絵画を学んだ。ピーテル2世、ヤン1世、アブラハム・ブリューゲルも、イタリアに旅し、絵画を学ぶ。
細密画の技法で、宗教画、風景画、風俗画(寓意画)、花の静物画、に秀でた画家一族。ピーテル1世は、44歳で死に、子孫はどう生きたか。ハプスブルグ家ルドルフ2世と兄ネーデルランド総督に12点蒐集されウィーン美術史美術館に所蔵された。ブリューゲル一族は、ピーテル・ブリューゲル1世が始祖。子、孫、ひ孫、4世代、150年続く、9人の画家がいた。
ピーテル2世は、薄利多売で、職人を多数雇い、画家経営が貧困に苦しむ。
ヤン1世は、上流階級を顧客に抱え、大儲けする。家を6軒、アントウェルペンに所有する。ルーベンスと共同制作する。花輪と聖母を描き入れた
アブラハム・ブリューゲルは、イタリア留学してフランドルに帰らず。風景画と花と果実の静物画で、人気画家となり、富裕になる。投機に失敗して、娘の持参金が払えず、娘は結婚できず修道院に入る。
孫のヤン2世は、寓意画と神話画を得意とした。ひ孫のヤン・ファン・ケッセル1世は、異国趣味と自然探求が得意で昆虫の標本を精密に描いた。
宗教改革の嵐の予兆
宗教改革1517(95か条の論題)の嵐の予兆。ネーデルランドの支配体制が崩壊する。支配階級の嘘が、暴かれるとき。16世紀、価値体系が滅びる。
きれいは汚い、汚いはきれい。Fair is foul, and foul is fair. (『マクベス』第一幕第一場)。
「大道廃れて、仁義あり。慧智出でて、大偽あり」
宗教改革 (1517『95か条の論題』)から、ほぼ百年後に起こった三十年戦争(1618~48年)によって、神聖ローマ帝国は崩壊、ハプスブルク家とブルボン家の対立は、ハプスブルク滅亡の始まりである。
*大久保正雄『旅する哲学者 美への旅』より
大久保正雄『永遠を旅する哲学者 美のイデアへの旅』
大久保正雄『藝術と運命との戦い、運命の女』
―――
ピーテル・ブリューゲル1世
ピーテル・ブリューゲル1世(1525—1569)、44歳で死す。
1551年、アントウェルペンで画家として登録。1553年、イタリアに旅立ち、ローマに滞在した。1559年、ヒエロニムス・ボッシュに影響を受けた幻想的な版画で名声を確立した。*
月暦画シリーズ『『雪の中の狩人』(1565年)は、晩年の作品である。
1563年、アントウェルペンからブリュッセルに移転して結婚し、1569年、没した。
ピーテル・ブリューゲル『バベルの塔』(1563年ウィーン美術史美術館)
ピーテル・ブリューゲル『バベルの塔』(1565年頃ボイマンス美術館)
ピーテル・ブリューゲル『雪の中の狩人』(1565年ウィーン美術史美術館)
――
展示作品の一部
マールテン・ファン・ファルケンボルフ「バベルの塔」1580頃
ピーテル・ブリューゲル2世『鳥罠』1601年。凍りついた湖に鳥罠が仕掛けられている。餌が仕掛けられ、鳥が罠にかかる。氷湖に薄氷の穴がある。人生の寓意。鳥罠がある湖の冬景色。原作は、ピーテル・ブリューゲル1世。
ピーテル・ブリューゲル2世「野外での婚礼の踊り」1610年頃
ヤン・ブリューゲル1世、ヤン・ブリューゲル2世「机上の花瓶に入ったチューリップと薔薇」1615-20年頃
ヤン・ブリューゲル2世「視覚の寓意」1645—50
アブラハム・ブリューゲル「果実の静物のある風景」1670
ヤン・ファン・ケッセル1世「蝶、カブトムシ、コウモリの習作」1659年
ヤン・ファン・ケッセル1世「蝶、カブトムシ、コウモリ、カマキリの習作」1659年
――
参考文献
ボイマンス美術館所蔵 ブリューゲル「バベルの塔」・・・幻想の画家ボスとブリューゲル
https://t.co/fIWq6mj12v
ハプスブルグ家の偉大な美術蒐集たち
「神聖ローマ帝国皇帝 ルドルフ2世の驚異の世界展」・・・ハプスブルグ家の悪趣味の館
http://bit.ly/2DiTQnd
http://platonacademy.cocolog-nifty.com/blog/2018/01/22-bfbe.html
ベルギー、奇想の系譜、ザ・ミュージアム・・・怪奇と幻想うごめくフランドル
http://platonacademy.cocolog-nifty.com/blog/2017/08/post-09fb.html
――
16、17世紀のヨーロッパにおいてもっとも影響力を持った画家一族のひとつであったブリューゲル一族。一族の祖であるピーテル・ブリューゲル1世は、現実世界を冷静に見つめ、人間の日常生活を何の偏見もなく、ありのままに表現した革新的な画家でした。この観察眼は、子から孫、ひ孫へと受け継がれ、一族の絵画様式と伝統を築き上げていくことになります。
父の作品の忠実な模倣作(コピー)を手掛けた長男のピーテル2世。父の自然への関心を受け継いで発展させ、多くの傑作を残したヤン1世。そして、ヤン2世やアンブロシウス、アブラハムといったヤン1世の子孫たちが、一族の作風を受け継ぎ、「ブリューゲル」はひとつのブランドとして確立されていくのです。
本展は貴重なプライベート・コレクションの作品を中心とした約100点の作品により、ブリューゲル一族と、彼らと関わりのある16、17世紀フランドル絵画の全体像に迫ろうという挑戦的な展示になります。
――
★「ブリューゲル展 画家一族 150年の系譜」東京都美術館
1月23日—4月1日 
http://www.tobikan.jp/
――
豊田市美術館、2018年4月24日(火)~ 7月16日(月・祝)
札幌芸術の森美術館、2018年7月28日(土)~9月24日(月・祝)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年8月 3日 (木)

ベルギー、奇想の系譜、Bunkamuraザ・ミュージアム・・・怪奇と幻想うごめくフランドル

Beligium2017Paul_delvaux_the_sea_is_near1965_2大久保正雄『旅する哲学者 美への旅』第121回
ベルギー、奇想の系譜、Bunkamuraザ・ミュージアム・・・怪奇と幻想うごめくフランドル
真夏の午後、美術館に行く。フランドルは、15世紀から幻想絵画の地である。フランドルの幻想とボスの怪奇生物。デルヴォーの幻想都市の美女に耽溺する真夏の午後。
スヘルトーヘンボスのヒエロニムス・ボス(Hieronymus Bosch.1450—1516)の時代から幻想絵画が描かれる。
藝術家は運命と戦う。藝術家は運命に苦悩する。運命との戦いの中から藝術は生まれる。藝術家は、運命の女と出会う。運命の恋人は女神である。運命の愛から、藝術は生まれる。
*大久保正雄『藝術と運命の戦い』
大久保正雄『旅する哲学者 美への旅』より
―――
美しき女相続人、マリー
マリー・ド・ブルゴーニュ(Marie de Bourgougne, 1457年—1482年)は、シャルル豪胆王が戦死し、「遍在する蜘蛛」フランス王ルイ11世から求婚される。これを断るためにハプスブルク家マクシミリアン1世に求婚する。1477年、結婚。ブリュッセルに生まれた、美的趣味にあふれる美女だった。美しく知的な女性だったが25歳で亡くなった。
フランドルは、マクシミリアン1世(神聖ローマ皇帝1493年—1519年)の時代から文化が栄え美術が蒐集される。ブルゴーニュ公女マリーとマクシミリアン1世の子が、フィリップ美公である。美公は、スペイン王女フアナと結婚する。ここからハプスブルク家の栄光が始まる。美公の母、マリーとマクシミリアン1世の出会いは、運命的な出会いである。
ベルギー・フランドル地方で中世末期から発達してきた「幻想絵画」「奇想画」美術をたどる展覧会。15世紀、ヒエロニムス・ボスから描かれる怪奇生物、写実的な悪魔や怪物の姿。ブリューゲル1世に受け継がれる。19世紀から始まる象徴派・表現主義。ジャン・デルヴィル。フェルナン・クノップフ。20世紀のシュルレアリスムを経て現代に脈々と受け継がれる。ポール・デルヴォー、ルネ・マグリット。500年以上にわたる不思議な奇想の系譜をたどる。
ポール・デルヴォー 運命の恋人と眠れるヴィーナス
ポール・デルヴォー(Paul Delvaux, 1897~1994)は、困難な運命との苦闘の末、別離した運命の女性と再会する。1929年32歳の時、運命の恋人アンヌ=マリー・ド・マルトラール(タム)と出会う。しかし別離。別れから17年後、恋人と運命的な再会を果たす。1934年「ミノートル展」で、ジョルジョ・デ・キリコの作品に出会いシュールレアリスムの影響を受ける。『眠れるヴィーナス』の幻想を描きつづける。デルヴォーは、96歳まで優美な白昼夢をヨーロッパの夜の風景に紡ぎつづけた。
マグリット(Magritte,1898‐1967)は、ジョルジョ・デ・キリコの「愛の歌」(1914)に感銘を受け、シュルレアリスムへと傾倒する。妻ジョルジェットとともにパリへ引っ越し、アンドレ・ブルトンを中心とするパリのシュルレアリストたちのグループに合流したマグリットは、言葉とイメージの関係を主題とする作品を多く生み出した。Surrealism(1926−1930)時代。
*大久保正雄『藝術と運命の戦い』
*大久保正雄『旅する哲学者 美への旅』より
―――
美は真であり、真は美である。これは、地上にて汝の知る一切であり、知るべきすべてである。
美しい魂は、輝く天の仕事をなす。美しい女神が舞い下りる。美しい守護精霊が、あなたを救う。
*大久保正雄『旅する哲学者 美への旅』より
大久保正雄『永遠を旅する哲学者 美のイデアへの旅』
―――
展示作品の一部
ヒエロニムス・ボス工房「トゥヌグダルスの幻視」1490-1500年頃 油彩・板 ラサロ・ガルディアーノ財団 Fundación Lázaro Galdiano
ヤン・マンデイン「聖クリストフォロス」 制作年不詳 油彩、板、ド・ヨンケール画廊蔵
ピーテル・ブリューゲル(父)[原画]、「大食」ピーテル・ファン・デル・ヘイデン[彫版]1558年 エングレーヴィング・紙 神奈川県立近代美術館
ピーテル・ブリューゲル(父)[原画]/ピーテル・ファン・デル・ヘイデン[彫版]「魔術師ヘルモゲネスの転落」1565年 エングレーヴィング、紙、プランタン=モレトゥス博物館蔵
ジャン・デルヴィル「レテ河の水を飲むダンテ」1919年 油彩・キャンヴァス 姫路市立美術館
ポール・デルヴォー「海は近い」1965 姫路市立美術館
ポール・デルヴォー「水のニンフ(セイレーン)」1937 姫路市立美術館
Paul Delvaux, The sea is near.1965.De zee is nabij – 1965
Paul Delvaux,Water Nymphs, Sirens. 1937
ルネ・マグリット「大家族」、1963年、油彩・キャンヴァス 宇都宮美術館
―――
ポール・デルヴォー 夢をめぐる旅・・・夢と現実の織りなす世界
http://mediterranean.cocolog-nifty.com/blog/2012/11/post-bc20.html
ボイマンス美術館所蔵 ブリューゲル「バベルの塔」展・・・幻想の画家ボスとブリューゲル
http://platonacademy.cocolog-nifty.com/blog/2017/05/post-6734.html
ベルギー幻想美術館: クノップフからデルヴォー、マグリットまで、Bunkamura ザ・ミュージアム、2009年9月3日(木)~10月25日(日)
ブリューゲル版画の世界、Bunkamura ザ・ミュージアム、2010年7月17日(土)~8月29日(日)
マグリット展・・・夕暮れの瞬間、光の帝国
http://mediterranean.cocolog-nifty.com/blog/2015/06/post-6e86.html
―――
★ベルギー奇想の系譜 ボスからマグリット、ヤン・ファーブルまで、ザ・ミュージアム
2017年7月15日(土)から9月24日(日)まで
http://krs.bz/bunkamura/c?c=58572&m=167440804&v=6722ccdb

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年5月18日 (木)

ブリューゲル「バベルの塔」展・・・幻想の画家ボスとブリューゲル

2017_babelヒエロニムス・ボスは、虚妄の権威を暴いた。フェリペ2世は、至高の地位に立って、人間の本質に何をみたのか。
私は十年前、ハプスブルグ帝国の大地を旅した。早春のスペイン、灼熱のウィーン、プラハ、ブダペスト。プラド美術館で、怪奇生物の画家、ヒエロニムス・ボス「快楽の園」(1510)、をみて眩暈がした。ウィーン美術史美術館で、ブリューゲル「雪の中の狩人」(1565年)をみたが、つながりがあると思わなかった。ブリューゲル『バベルの塔』(1565)には「壮大な風景と細部の描写の対比」がある。1400人の人間が描かれている。塔を建築する人々。民衆の蜂起への讃歌か。
16世紀、教会の腐敗が明らかになり、権威ある者がいかさま師であることが判明。価値観が崩壊した。宗教改革1517(95か条の論題)の嵐の予兆。ネーデルランドの支配体制が崩壊する。支配階級の嘘が、暴かれるとき。16世紀、価値体系が滅びる時代。きれいは汚い、汚いはきれい。
Fair is foul, and foul is fair. (『マクベス』第一幕第一場)。「大道廃れて、仁義あり。慧智出でて、大偽あり」
*大久保正雄『旅する哲学者 美への旅』より
―――
永遠を旅する哲学者は、贋物の師を殺さなければならない。
花吹雪、花も嵐も踏み越えて、叡智の海を旅する精神のように、地の果て時空の果て、海のみえる丘の神殿に行く。
永遠を旅する哲学者、時を超え、黄昏の丘を超えて、美へ旅する。マエストロ究極の夢は何か。
美は真であり、真は美である。これは、地上にて汝の知る一切であり、知るべきすべてである。
美しい魂は、輝く天の仕事をなす。美しい女神が舞い下りる。美しい守護精霊が、あなたを救う。
*大久保正雄『旅する哲学者 美への旅』より
*大久保正雄『永遠を旅する哲学者 美のイデアへの旅』
―――
★ピーテル・ブリューゲル1世
ピーテル・ブリューゲル1世(1525—1569) 44歳で死す。
1551年、アントウェルペンで画家として登録。1553年、イタリアに旅立ち、ローマに滞在した。1559年、ヒエロニムス・ボッシュに影響を受けた幻想的な版画で名声を確立した。*
月暦画シリーズ『『雪の中の狩人』(1565年)は、晩年の作品である。
1563年、アントウェルペンからブリュッセルに移転して結婚し、1569年、没した。
ピーテル・ブリューゲル『バベルの塔』(1563年ウィーン美術史美術館)
ピーテル・ブリューゲル『バベルの塔』(1565年頃ボイマンス美術館)
ピーテル・ブリューゲル『雪の中の狩人』(1565年ウィーン美術史美術館)
―――
★ヒエロニムス・ボスのモチーフを使って描いた版画。
ピーテル・ブリューゲル『聖アントニウスの誘惑』1556
ピーテル・ブリューゲル『大きな魚は小さな魚を食う』1557 強き者が弱き者に勝つ世を暗示している。
ピーテル・ブリューゲル『七つの罪源』シリーズは、ヒエロニムス・ボス『七つの罪源』の影響がある。
*ピーテル・ブリューゲル『七つの罪源』(1558—60)「貪欲、傲慢、激怒、怠惰、大食、嫉妬、邪淫」。ヒエロニムス・ボスが描いた怪奇生物たちを思い起こさせる。
ピーテル・ブリューゲル『七つの徳目』シリーズ「信仰、希望、愛徳、正義、剛毅、賢明、節制」。
*ブリューゲル版画の世界Bunkamuraザ・ミュージアム、2010年7月17日(土)-8月29日(日)
―――
★ピーテル・ブリューゲル『バベルの塔』
ピーテル・ブリューゲル『バベルの塔』は3点あったが、1点は失われ、現在ウィーン美術史美術館とボイマンス・ファン・ベーニンゲン美術館(ロッテルダム)の2点だけが残っている。ウィーンの『バベルの塔』(1563年ウィーン美術史美術館)がボイマンスの『バベルの塔』(1565年頃ボイマンス美術館)より先に描かれた。
この絵画の「壮大な風景と細部の描写の対比」「ミクロとマクロの融合」が、小規模な画面(59.9 cm×74.6 cm)を超えて威圧感を生み出している。
描かれている物語は「人間の傲慢」「神の戒め」である。がそこで活動する人々の細密な描写から、ブリューゲルの「人間に対するまなざし」が感じられる。★
1553年、ブリューゲル、ローマ滞在の経験がここに生きている。ローマのコロッセウムを参考にしたた。
*ヒエロニムス・コックの版画『コロッセウムの眺め』1551年
*マールテン・ファン・ヘームスケルクの版画『ローマのコロッセウム』1572年
―――
★「地獄と怪奇生物の画家」ヒエロニムス・ボス(1450—1516)
ヒエロニムス・ボッシュ(Hieronymus Bosch1450—1516)は、ス・ヘルトーヘンボスで裕福な画家の工房の家に生まれる。富裕層の娘と結婚し恵まれた生活を送った。後期ゴシック画家。
ヒエロニムス・ボッシュ『快楽の園』(1490—1510)、初期フランドル派の画家ヒエロニムス・ボスが描いた三連祭壇画。ボスが40歳から60歳の1490年から1510年の20年間のいずれかの時期の作品。『天国』『現世』『地獄』の三連祭壇画。
*左翼『エデンの園』生命の泉にいる梟、中央『快楽の園』、右翼『音楽地獄』楽器による罰、鳥の頭の悪魔、樹木人間とナイフを挟む耳。

性的な秘儀を重視するアダム主義の異端派か、人間の愚行と罪の告発や断罪を目的とした作品であるか、今も作品の解釈が議論され続けている。堕落した支配階級に対する批判がある。宗教改革1517(95か条の論題)の嵐の前の予兆の時、だがハプスブルク家フェリペ2世が購入したので、作品の意図の解釈が複雑である。
ヒエロニムス・ボッシュ(1450—1516)は、スペイン・ハプスブルク家のお気に入りだった。フィリップ美公、マルガレーテ女公(フィリップ美公の妹) 、フェリペ2世が多くの作品を所有する。
ヒエロニムス・ボッシュは「奇想の画家」と形容される。彼の画風は独立して確立されたもので、いわゆる師匠に相当する人物を見つけることは出来ない。ハプスブルク家に見出され、ネーデルラント総督フィリップ美公、スペイン王フェリペ2世はボッシュの絵を好んだ。
『最後の審判』はネーデルラント総督フィリップ美公に、『聖アントニウスの試練』はネーデルラント総督マルガレーテ(マルグリット)女公(フィリップ美公の妹)が所有していた。スペイン王フェリペ2世が多くの作品を所有する。ボッシュ「聖アントニウスの誘惑」は、リスボンにある。
★フェリペ2世の絵画コレクション。
ヒエロニムス・ボッシュ「快楽の園」1510「愚者の治療 いかさま師」1490「7つの大罪」1480「乾草の車」1500。スペインのフェリペ2世はボッシュの絵画の熱烈な愛好者であり、現在10点がプラド美術館蔵にある。
★参考文献
岡部紘三『図説 ヒエロニムス・ボス 世紀末の奇想の画家』2014
岡部紘三『図説 ブリューゲル 風景と民衆の画家』2012
森洋子『ブリューゲルの世界』新潮社2017
*大久保正雄『旅する哲学者 美への旅』より
*大久保正雄『永遠を旅する哲学者 美のイデアへの旅』
ハプスブルク帝国年代記 王女マルガリータ、帝国の美と花
https://t.co/T2it2d8Zb1
―――
★ボイマンス美術館所蔵 ブリューゲル「バベルの塔」展
東京都美術館2017年4月18日(火)~7月2日 (日)
国立国際美術館2017年7月18日(火)~10月15日(日)
*ブリューゲル版画の世界Bunkamuraザ・ミュージアム、2010年7月17日(土)-8月29日(日)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2010年8月31日 (火)

ベルギー王立図書館所蔵 ブリューゲル版画の世界

2010071701_2灼熱の夏の午後、熱風吹き荒ぶなか、美術館に行く。熱帯夜47日、記録的な猛暑である。
ピーテル・ブリューゲル(1525/30-1569)には、ヒエロニムス・ボッシュ『快楽の園』(1480年-1500年プラド美術館)の影響が濃厚である。プラド美術館でみた『快楽の園』の超現実的世界を思い出す。『快楽の園』に溢れる視覚的イメージの奔流の源泉はどこにあるのか。
16世紀は諺の黄金時代と呼ばれる。ブリューゲルの版画は、17世紀オランダの寓意画、フェルメール(1632-1675)の風俗画に影響を与えた。七つの美徳シリーズに見られるように、目にみえない抽象的な概念を視覚化する。美徳は目にみえない。美徳に対して、悪徳は目にみえる。七つの悪徳「傲慢、激怒、怠惰、貪欲、大食、嫉妬、邪淫」は人間の醜さを象徴するイメージとして視覚化できる。「燃えている家で自分の体を温めるエゴイスト」「盲人が盲人を導けば二人とも穴に落ちる」「大きな魚は小さな魚を食う」これらの諺には現代にも生きる人間の醜さに対する洞察がある。七つの大罪には、人間の醜さの寓意と風刺が克明に描かれている。人間の世界は悪に満ちあふれている。
七つの美徳は、ギリシアの四元徳「知恵、勇気、節制、正義」に、後世、キリスト教の徳「信仰、希望、愛」が加えられたものである。「知恵、勇気、節制、正義」はプラトン『国家』が出典である。『国家』において探求された主題である。
■展示構成
序 章 Prologue
第1章 雄大なアルプス山脈の賛美と近郊の田園風景への親近感 
The Homage to the Landscape
第2章 聖書の主題や宗教的な寓意を描く 
Biblical Subjects and Religious Allegories
「七つの罪源シリーズ」(傲慢、激怒、怠惰、貪欲、大食、嫉妬、邪淫)
「七つの美徳シリーズ」(信仰、希望、愛徳、正義、剛毅、賢明、節制)
第3章 武装帆船やガレー船の驚くべき表現力 
The Detailed Expression of the Armed Ships
第4章 人間観察と道徳教訓の世界 
The World of Moral Allegories and Fools
第5章 諺を通じて知る「青いマント」の世界 
The World of the “Blue Cloak” observed through Proverbs
第6章 民衆文化や民話への共感 
The Compassion for Popular Culture and Tales
第7章 四季や月暦表現で綴る市民の祝祭や農民の労働 
Labors and Feasts from the Cycle of Seasons and Months
最終章 Epilogue
――――――――――
「ベルギー王立図書館所蔵 ブリューゲル版画の世界」
★Bunkamuraザ・ミュージアム2010年7月17日(土)-8月29日(日)
★新潟市美術館 9月4日~10月17日
★美術館「えき」KYOTO 10月22日~11月23日
2010071702

| | コメント (1) | トラックバック (1)

2009年10月13日 (火)

ベルギー幻想美術館 クノップフからデルヴォー、マグリットまで・・・金木犀の香る夜

Belgy2009200910091_2大久保 正雄『旅する哲学者 美への旅』より 嵐の後、晴れた夕方、美術館に行く。10月9日、金曜日の夜はナイトミュージアム。夜、世界がポール・デルヴォーの幻想世界に溶けていく。幻想美術館、素晴らしい。
■幻想美術館、フランドル絵画の奇想の系譜
世紀末の神秘主義的な幻想絵画、象徴主義の絵画、薔薇十字会、二十人会(レ・ヴァン)、シュルレアリスム。
ありえない超現実世界をの系譜を追求した画家たち。リアリズムに反旗を翻して難解な神秘主義を追究した。
幻の女、世紀末の魔性の女、ファム・ファタル(運命の女)。現実の影に潜む美しい女たち。官能的な幻影の情景。優雅にして甘美な女。絵画の中の桃源郷である。
幻想の港町。海の彼方に幻影の国がある。人間は現実だけでは生きられない。
現代画家・榎俊幸は、ベルギー象徴派に似ていると感じていたが、ジャン・デルヴィルに似ている。
■展示作品
ジャン・デルヴィル「レテ河の水をのむダンテ」「茨の冠」「ジャン・デルヴィル夫人の肖像」
レオン・フレデリック「春の寓意」「アッシジの聖フランチェスコ」
ルネ・マグリット「囚われの美女」
ポール・デルヴォー「水のニンフ」「海は近い」「世界の果て」「よそ行きのドレス」「最後の美しい日々」「ささやき」「ヴァナデ女神への廃墟の神殿の建設」
■姫路市立美術館
姫路市立美術館、ベルギー美術コレクションを350点所蔵。恐るべし、姫路市立美術館。
ジャン・デルヴィル、レオン・フレデリック、ルネ・マグリット、ポール・デルヴォーの膨大な作品を所蔵する。
―――――
 19世紀後半から20世紀前半にかけてのベルギーは、本国の何十倍もある植民地からの富が産業革命を加速させ、飛躍的な発展を遂げました。その恩恵は芸術の分野にも及び、多くの優れた画家が輩出し、勢い付いたリベラルな若い実業家たちは新しい芸術を支えました。
 しかしながら皮肉にもその芸術の中身は、発展する近代社会における人間の疎外を背景にしたものでした。ある芸術家は空想の世界に、あるいは黄昏の薄暗がりの中に逃げ場を求め、またあるものは過去の世界に心の平安を見出しました。この時代に最も強いメッセージを放っていたのは、象徴主義、シュルレアリスム、表現主義にまたがるこうした内向的な芸術家たちの作品群、つまり「ベルギー幻想美術」だったのです。
 ここで特徴的なのは、女性の圧倒的な存在感です。多くは優雅な貴婦人として、あるいは世紀末の魔性の女として、ときには中性的な不思議な魅力を持つ少女として描かれる女性たちは、いわば画家自身の分身として、その目で、あるいは体で、何かを訴えかけ、観る者を彼方へと誘っていきます。一連の作品が醸し出す雰囲気が似ているのは、このような背景を共有しているからなのです。
  かくも優れた作品群が日本にまとまって存在していることに敬意を表し、「ベルギー幻想美術館」という名のもとに開催される本展は、ベルギー近代美術の精華を堪能する絶好の機会となることでしょう。
 本展は、油彩・水彩・素描・版画など約150点で構成されます。なかでも、100点に及ぶ版画のコレクションは大変見ごたえがあります。
★「ベルギー幻想美術館 クノップフからデルヴォー、マグリットまで」展、
Bunkamuraザ・ミュージアム、9月3日(木)より10月25日(日)まで、姫路市立美術館所蔵ベルギー美術コレクション。

| | コメント (0) | トラックバック (4)