「スイス絵画の異才 カール・ヴァルザー 世紀末の昏き残照」・・・象徴主義の神秘と謎、隠者の森
大久保正雄『旅する哲学者 美への旅』第428回
大紫躑躅咲く、風薫る、虹始現れる、午後、東京ステーションギャラリーに行く。冨田章館長の報道内覧会、説明会を聞く。スイス新ビール美術館館長が来ている。
カール・ヴァルザー(1877 - 1943)は、「美術史の中で見過ごされてきた、作品の価値は、その名が知られているかとは関係がない」冨田章・東京ステーションギャラリー館長。グスタフ・クリムト、ビアズリーらの象徴主義、世紀末の画家の仄暗さと、色彩に魅了される。カール・ヴァルザーはスイスのビールで生まれた、1903年にベルリン分離派に加わり、主導した。1908年半年ほど日本に滞在し、制作をしていた。
カール・ヴァルザー《婦人の肖像》1902年、読書する婦人、背後にある森の中に羊が6頭遊んでいる、婦人は室内で大きな帽子を被っている。何かが変である。《隠者》1907年、隠者は庭に座って中世の写本を読んでいる。隠者の背後の木に白い花が咲いている家があり、森があり、地平線の彼方に雲が湧いている。《森》1902-1903年、夕暮れの断崖の上に森がある。《テラスからの眺め》1900年頃、《人形の乳母車と少女》1905年以前、樹々の上に不思議な少女がいる。グスタフ・クリムト、ビアズリーらの象徴主義、世紀末の仄暗さ。偉大な絵画は極大にしても極小にしても価値がある。不朽の名画。象徴主義の神秘と謎を讃える。
森の隠者は、藝術家、思想家であり、詩人であり、著作家である。家と森を持ち、地平線の彼方に空を眺める。
虹始見、幸運の扉が開く、幸運の女神、美の女神が現れる。美の使徒、天道の使者、純粋な魂、美しい魂と美しい肉体を持つ者を如意輪観音が救う。
*大久保 正雄『旅する哲学者 美への旅』より
大久保正雄『永遠を旅する哲学者 イデアへの旅』
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展示作品の一部
カール・ヴァルザー《テラスからの眺め》1900年頃 個人蔵
カール・ヴァルザー《婦人の肖像》1902年 ゴットフリート・ケラー財団(新ビール美術館寄託)
カール・ヴァルザー《森》1902-1903年、新ビール美術館
カール・ヴァルザー《人形の乳母車と少女》1905年以前、新ビール美術館
カール・ヴァルザー《テラスからの眺め》1900年頃 個人蔵
カール・ヴァルザー《夜の散歩》1905年、個人蔵
カール・ヴァルザー《隠者》hermit 1907年、チューリヒ美術館(H. E. マイエンフィッシュ博士コレクション、1946年収集)
カール・ヴァルザー《ゲルハルト・ハウプトマン作『グリゼルダ』舞台美術のための下絵:第1幕 第2場、ガレリア》1909年、ゴットフリート・ケラー財団(新ビール美術館寄託)
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カール・ヴァルザー(1877 - 1943) 略歴
スイスのベルン近郊の町ビール(ビエンヌ)に生まれる。1899年にベルリンに移住。1903年にベルリン分離派に加わり、審査員も務める。舞台美術家としても人気を集め、主にベルリンで舞台装置や衣装をデザインし、その仕事は生涯で28件に及んだ。挿絵画家・装幀家として出版界でも活躍し、室内装飾も手がけた。恋人がいたが失恋、その女性は自殺。その年、1908年に小説家ベルンハルト・ケラーマンとともに日本を旅行し、ケラーマンによる旅行記に挿絵を描いた。1925年に活動拠点をチューリヒに移してからは、主に壁画や室内装飾で評価を高めた。一歳下の弟ローベルト・ヴァルザー(1878 – 1956)は著名な文筆家。
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参考文献
「スイス絵画の異才 カール・ヴァルザー 世紀末の昏き残照」・・・象徴主義の神秘と謎、隠者の森
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「クリムト展 ウィーンと日本 1900」・・・黄金の甲冑で武装した騎士、詩の女神に出会う、純粋な愛と理想
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クリムト『ベートーベン・フリーズ』・・・理念を目ざす藝術家の戦い。黄金の甲冑で武装した騎士、詩の女神に出会う
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ウィーン・モダン クリムト、シーレ 世紀末への道・・・装飾に覆われた運命の女、黄金様式と象徴派
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「ギュスターブ・モロー展 サロメと宿命の女たち」・・・夢を集める藝術家、パリの館の神秘家。幻の美女を求めて
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「スイス絵画の異才 カール・ヴァルザー 世紀末の昏き残照」プレスリリース
全作品 日本初公開!
20世紀前半のスイスで活躍した異才カール・ヴァルザー(1877–1943)は、ベルン近郊のビールに生まれました。1歳下の弟ローベルトは作家になり、のちにその著作にカールが挿絵を描いています。20代でベルリンに出たヴァルザーは、革新的な表現を目指したベルリン分離派に加わり、象徴主義的な絵画作品をいくつも残しています。そこはかとない昏(くら)さと精妙な色彩をあわせもつその作品群は、謎めいた神秘性を湛え、見る者を惹きつけてやみません。
カール・ヴァルザーの生涯で特筆すべきことは、彼が日本を訪れて制作をしていたことでしょう。1908年にドイツの小説家ベルンハルト・ケラーマンとともに来日したヴァルザーは、東京や宮津(京都府)などに滞在して、熱心に日本の風景や風俗を描きました。これらの作品は当時の様子を伝える貴重な資料であると同時に、美術的にも非常に優れた見応えのあるものばかりです。その多くは水彩で描かれていますが、これまでほとんど公開されてこなかったために、驚くほど鮮やかで美しい色彩を残しています。本展は、これらの仕事に加えて、挿絵や舞台美術、壁画でも活躍したヴァルザーの全貌を伝える画期的な試みです。全作品約150点が日本初公開となります。
謎めいた神秘性を湛える、初期の象徴主義的作品群
知られざる画家
カール・ヴァルザーの名を知る人は、美術業界においても決して多くはありません。母国スイスでは、近年その再評価が始まっていますが、知名度のかなり低い画家と言っていいでしょう。東京ステーションギャラリーでは、これまでも美術史の中で見過ごされてきたアーティストの展覧会を数多く開催してきました。*1) 作品の価値や魅力は、その名が知られているかどうかとは関係がありません。最初に彼の作品を見たとき、わたしたちはその鮮烈さにすっかり魅了されました。そして多くの人とこの感動を分かち合いたいと思ったのです。会場に足を運んでいただければ、その魅力を理解いただけるはずです。
初期ベルリン時代
1877年に、スイスのベルン近郊にあるビールで生まれたカール・ヴァルザーは、シュトラスブルク*2) の美術工芸学校で学んだあと、1899年からベルリンを中心に活動しました。1902年に、マックス・リーバーマンが会長を務めるベルリン分離派*3) の展覧会に初出品し、翌年には会員になります。本の装幀や挿絵、舞台美術、壁画などの仕事をする一方で、この時期には象徴主義的な絵画にも取り組みました。鮮烈でありながら、世紀末の残照とでも言うべき昏(くら)さをともなう、寓意や含意を感じさせる神秘的な作品群は、観る者を強く惹きつける力をもっています。
日本の風景と風俗、芸妓や歌舞伎を描いた美しい水彩画
120年前の日本が鮮やかに甦る
日本滞在
1908年、ヴァルザーはドイツの出版社に依頼されて、小説家のケラーマン*4) とともに日本を訪れます。ケラーマンが書く日本紀行のための挿絵を描くのが目的でした。*5) 4月から約半年に及ぶ滞在期間中にふたりは日本各地を巡りますが、大いに気に入って長逗留したのが宮津(京都府)です。ヴァルザーはこの街で、芸妓や舞妓、歌舞伎役者や市井の人々の姿を、生き生きとした筆致と美しい水彩で描きとめています。これらの作品は、京都の風景や祭を描いた重厚な油彩画とともに、120年前の日本の姿を鮮やかに甦らせます。
領域を超えた多彩な仕事
挿絵と舞台
ヴァルザーは生涯を通じて、挿絵や舞台美術、室内装飾や壁画の仕事で生計を立てていました。ドイツとスイスにはいくつもの壁画が現存していますし、舞台美術の分野ではシェイクスピアはじめ多くの作品でセットやコスチュームのデザインを担当しました。コスチュームのデザイン画は、まるでファッション画のような華やかさをまとっています。また、装幀や挿絵でも、ひとつ下の弟で詩人として名を馳せたローベルト*6) の本をはじめ、少なくない仕事を残しました。多くはエッチングによるものですが、その巧みな線描表現も本展の見どころのひとつです。
*1 「大野麥風展」(2013年)、「幻の画家 不染鉄展」(2017年)、「木彫り熊の申し子 藤戸竹喜」展(2021年)、「宮脇綾子の芸術」展(2025年)など
*2 現在のストラスブール(フランス)、当時はドイツ領だった
*3 アカデミックな伝統から離脱して、新しい造形芸術を志向した分離派は、最初ミュンヘンで創設され(1892年)、ウィーン(1897年)、ベルリン(1898年)へと波及した
*4 ベルンハルト・ケラーマン(1879-1951)、ドイツの作家。資本主義を批判した『トンネル』(邦訳は国書刊行会から出版)が有名
*5 『さっさよやっさ』(カッシーラー書店、1911年)
*6 ローベルト・ヴァルザー(1878-1956)、邦訳に『日々はひとつの響き ヴァルザー=クレー詩画集』(平凡社、2018年)などがある
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スイス絵画の異才 カール・ヴァルザー 世紀末の昏(くら)き残照
2026年4月18日(土)~2026年6月21日(日)
会場 東京ステーションギャラリー
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「スイス絵画の異才 カール・ヴァルザー 世紀末の昏き残照」、東京ステーションギャラリー、4月18日(土)~6月21日(日)



















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