プーシキン美術館展 フランス絵画300年・・・詩人に霊感を与えるミューズ
大久保 正雄『旅する哲学者 美への旅』
夏の夜、美術館に行く。「詩人に霊感を与えるミューズ」は、藝術にとって象徴的である。
美しき乙女に導かれるパルメニデスの騎行の旅、ディオティマに秘儀伝授を受けるソクラテス。ソクラテスと遊女(ヘタイラ)アスパシア(『ソクラテスの思い出』第2巻6章)。金剛界曼荼羅「理趣会」の愛金剛女菩薩。藤原俊成と妻美福門院加賀(藤原親忠女-1193)。藤原定家と母美福門院加賀。アンリ・ルソー「詩人に霊感を与えるミューズ」は、詩人ギョーム・ド・アポリネールと恋人の画家マリー・ローランサンを描く。神の生命の戦略によって、藝術家、哲学者には、美しい女が、天の使いとしてやってくる。(大久保正雄『美の天使たち』)
ルネサンス文化、ギリシア文化の影響を受ける西洋美術史。クロード・ロラン「アポロとマルシュアスのいる風景」、ダヴィッド「ヘクトルの死を嘆くアンドロマケ」、ド・ラ・ペーニャ 「クピドとプシュケ」、ジャン=レオン・ジェローム『カンダウレス王』。17世紀、ニコラ・プッサン、クロード・ロランから、アンリ・ルソー、シャガールまで、西洋美術史は、ギリシア文化、ルネサンス文化の象徴にみちている。(大久保正雄『地中海紀行』)
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展示作品
クロード・ロラン「アポロとマルシュアスのいる風景」1639
ニコラ・プッサン「アモリびとを打ち破るヨシュア」1624-25年頃
ダヴィッド「ヘクトルの死を嘆くアンドロマケ」1783
フランソワ・ブーシェ「ユピテルとカリスト」1744年
18世紀ロココ芸術を代表するブーシェ。女神ディアナの従者カリストを我がものにしようと、ディアナに扮して近づくユピテル。その後ろにはユピテルの象徴である鷲が潜み、誘惑する瞬間。
ジャン=オーギュスト=ドミニク・アングル「聖杯の前の聖母」1841年
ナルシス・ディアズ・ド・ラ・ペーニャ 「クピドとプシュケ」1851年
ジャン=レオン・ジェローム『カンダウレス王』1859-60
Jean-Léon Gérôme (1824–1904) : King Candaules, 1859-60
カンダウレス王は自分の妻ニュシア(別伝によればルド)の美しさを自慢するあまり、ギュゲスに妻の裸体を見させた。ギュゲスはカンダウレスの年下の友人であった。怒った妻はギュゲスに対し、自殺するか王を殺して王位と自分とを我が物とするか迫った。ギュゲスは王を殺し、王国と王妃を手に入れる。(ヘロドトス『歴史』第1巻第8‐13節)
別の伝説によれば、ギュゲスは自分の姿を見えなくさせる魔力を持つギュゲースの指輪を用いてカンダウレスを殺した。プラトン『国家』
ウジェーヌ・フロマンタンの『ナイルの渡し船を待ちながら』1872年
ピエール=オーギュスト・ルノワール「ジャンヌ・サマリーの肖像」1877年
フィンセント・ファン・ゴッホ「医師レーの肖像」1889年
アレクシ・ジョゼフ・ペリニョン『エリザヴェータ・バリャチンスカヤ公爵夫人の肖像』1853
Alexis-Joseph Perignon (1806-1882):Elizaveta Alexandrovna Bariatinskaia
Elizaveta Alexandrovna Tchernicheva (1826-1902), épouse du prince Vladimir Ivanovich Bariatinsky, 1853
アレクシ=ジョセフ・ペリニョン『エリザヴェータ・バリャチンスカヤ公爵夫人の肖像』
手にバラと扇を持ち、青の縁取りのある白いドレスをまとう美しい女。美しい肌にネックレスの真珠の輝きが映える。
アンリ・ルソー「詩人に霊感を与えるミューズ」1909年
The Muse Inspiring the Poet :La Muse Inspirant le Poete; portrait of Guillaume Apollinaire and Marie Laurencin
ペンを片手に立つ詩人のギヨーム・アポリネールと、寄り添う画家マリー・ローランサン。リュクサンブール公園の樹木が、恋人たちを祝福するかのようにアーチを作り生い茂る。ルソーは、アポリネールの顔や手を採寸しながら描いたといわれるが、二人の姿は異様であり、風刺画のようだ。画家の友人たちへの賛辞の形なのか。
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モスクワのプーシキン美術館から、珠玉のフランス絵画が来日します
知る人ぞ知る、フランス絵画の宝庫ロシア。17世紀古典主義の巨匠プッサンにはじまり、18世紀ロココの代表ブーシェ、19世紀のアングル、ドラクロワ、ミレー、印象派やポスト印象派のモネ、ルノワール、セザンヌ、ゴッホ、そして20世紀のピカソやマティスまで――。プーシキン美術館のコレクションの中核をなすフランス絵画の質の高さは、フランス本国もうらやむほどのものです。
本展では、選りすぐりの66点で、フランス絵画300年の栄光の歴史をたどります。なかでも、ルノワールの印象派時代最高の肖像画と評される≪ジャンヌ・サマリーの肖像≫は、最大の見どころです。 「ロシアが憧れたフランス」の粋を、どうぞお楽しみください。
http://pushkin2013.com/
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4月26日~6月23日:愛知県美術館、
7月6日~9月16日:横浜美術館、
9月28日~12月8日:神戸市立博物館
http://www.yaf.or.jp/yma/index.php
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